大判例

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仙台高等裁判所 昭和59年(ネ)232号 判決

【理由】

一当裁判所も原判決の認容した限度で被控訴入らの請求は理由がありこれを認容すべきものと判断するのであるが、その理由は次のとおり附加、訂正するほかは原判決の理由一ないし三に説示するとおりであるから、ここにこれを引用する。

1  原判決一〇枚目表二行目の「各事実は」の次に「第一事故発生の時刻及び県道上に傾斜した電話柱の本数を除き」を加える。

2  同一〇行目の「県道の野辺地方向へ」以下、同末行の「死亡した」までを「コンクリート製電話柱の地上の約六・四メートルの長さの部分が、舗装された部分の幅員約六メートルの路上に倒れかかり野辺地方向へ向う車線(中央線の表示はないか道路の左半分)をこえて反対車線の中間付近にまで達し、その電話柱の最も高い先端の部分でさえも、路面上から約三・五メートル(四号柱)、ないし三・一メートル(五号柱)であり、野辺地方向に向う車線上では更に低く位置して車線を塞ぐ形となり通行の人車と衝突するおそれのある状態となつたこと、訴外田中八十三は同日午後六時三〇分頃三沢方向から野辺方向に向い車高一・一六メートルの自動二輪車に乗り、道路の左側を走行して現場にさしかかり、路上に傾斜していた四号柱を避けて通過したものの、そこから更に三六メートル進行し、道路の舗装された部分の左側端から〇・八メートルの所で路面上一・五メートルの高さに位置して傾斜していた五号柱の中央部付近(根本から約三・四メートル、同電話柱は道路の舗装された部分の外側一・八メートルの所より、道路に向い直角の方向に約三〇度の角度で傾斜し、根本から約三・四メートルの部分か丁度舗装された部分の左側縁より〇・八メートル内側の路面の真上一・五メートルに位置していた。)に頭部を衝突強打させて、頸椎骨折により即死した」に改める。

3  同一二枚目裏八行目の「同日午後六時ころ」以下同一三枚目表四行目の末尾までを「同日午後六時、南部クボタ乙供営業所の中村という者から『電話柱が折損して交通の障害になっている』旨の電話による通報を受けたので、これを同五分頃他出中の上司である同局機械課長小形典巳に電話により報告し、同課長は直ちに同席していた電話柱の保全等の所管課長である同局線路宅内課長飛内周一に『乙供でダンプが電話線を引つかけて柱を倒し交通の支障になつている』旨を伝えた。そこで、飛内課長は同一八分頃出局したがその間野月建材からも同様の通報が宿直に入つていたので、同課長から更に野月建材に電話をして同会社代表者野月秋男に対し交通事故等の二次災害の防止のため現場に誘導員等を配置するよう指示するとともに、同一八分頃、現場復旧のため前記小形課長及び同局巡回保全長の出局応援を求めて、所要の資材等を整えたうえ三人で同二五分頃タクシーで同局を出発し、同五〇分頃現場に到着したが、その間に同三〇分頃前記(二)の状況で現場に誘導者等もないままに、本件第二事故が発生し、同人らが現場に到着したときは、すでに野辺地警察署の警察官が第二事故の処理のため臨場していた。電話柱の復旧作業は同日午後七時一五分ころ終了した。」に改める。

4  同一三枚目裏末行の「信用できない。」の次に「また原審における吹越勝弘の本人尋問における供述中には、本件第二事故のあつた直前頃には電話柱が三本位見通せた旨の部分があるが、同人は当時かなり狼狽していたばかりか、照明度の刻々に変化する簿暮から夜間にかけてかなりの長い時間帯にわたり現場を去来していた者であることは前記事実関係に照らして明らかであつて、右供述はその信頼性に疑いがあり、事故の翌日同時刻頃、うす曇りと小雨というほぼ似通つた気象条件のもとで現場において見分した結果である甲第一二号証と対比して採用できない。次に甲第一〇号証の一によれば、田中八十三が運転していた自動二輪車の前照灯が事故直後の見分時において点灯状態になつていなかつたことが認められるけれども、同号証の二及び甲第一一号証の二によれば同自動二輪車は五号柱に衝突した後野辺地方向(進行方向)に三六メートル離れた六号柱まで惰性でとばされ転倒したことが認められるのであり、また先に認定したとおり、同人は路上に五号柱と同様の状態で傾斜していた四号柱を避けて通過した事実をも併せて考察するときは、右事故後の状態は事故による衝撃の結果生じたものと考える余地もありうる(衝撃により前照灯のスイッチがオフ状態になることも考えられる。)の中で、右事故後の状態から、同人が無灯火で進行していたものと即断することはできない。」を加える。

5  同一五枚目表二行目の「前記」以下、同裏七行目までを「前記認定の事実関係からすると、野辺地電報電話局の職員は第一事故発生後の午後六時、前記南部クボタ乙供営業所の職員から第一事故により電話線が折損して路上に傾斜し交通に支障が生じていることの通報を受けてその事実を知るに至つたのであるから、その時刻からすれば間もなく夜間にかかるうえ、同局職員が復旧作業のため現場に赴くにしても、準備及び現場到着までにかなりの時間を要するので、その間に交通事故の発生が虞れられる状況であることを認識したのであり、したがつて、同局職員は右通報を受けた後直ちに現場の最寄りの警察署に対して右通報の内容を告げて、速やかに現場付近の交通整理等の事故防止のための配備をするよう要請すべきものであり、その措置を講じていれば、第二事故の発生を未然に防止しえた可能性が高いと認められる(現に第二事故発生後同局職員の到着前に野辺地警察署の警察官が臨場していたのであり、警察官の迅速な臨場配備が可能であつたと考えられる。)。しかるに、同局の職員は、野月建材の代表者に対する電話により現場における誘導等を指示したのみで、所轄警察署に対して右の要請をしなかつたのであるから、控訴人にとつて、回避することのできない不可抗力により第二事故が生じたものとはとうてい言えないのであり、控訴人の電話柱の保存に瑕疵が存したことは否定できない。控訴人は、同局職員が第一事故の具体的状況の通報を受けていず、またその状況を把握できる立場になかつたとし、第二次事故の発生を予見することができなかつたと主張するのであるか、電話柱が折損して県道上に傾斜し、交通の支障が生じていることの通報があり、その事実と夜間にかかることの認識があれば、交通事故の二次災害の生じる危険は当然に予測されるところであり、同局職員はその危険を予測したからこそ野月建材の代表者に対してその防止のための指示を与えているのである。しかして、同局職員はこのような場合に事故防止のために迅速な対応をするだけの強力な機動力と組織を有しその職責を有する警察官署に対し警察官の出動を要請する方法があり、その方法によれば事故の発生が防止された可能性が高いのに拘らず、その機動力や組織力において遙かに劣弱な一私人に事故防止のための措置を依頼しただけでは適切にして十分な措置を講じたものとはとうていいえないというべきである。また、控訴人は第一事故を起した原因者である吹越勝弘に、道路交通法七二条一項に基づく、警察官に対する事故報告の義務があるから、控訴人には警察官に対して同じ内容の通報をなすべき義務は存しないと主張するが、控訴人の通報義務は、道路交通法規に基づく事故報告の義務ではなく、電話柱という土地の工作物を設置保存する者かその工作物について生じた瑕疵により他人に危険を及ぼす緊急な事態が生じた場合に危険防止のための殆んど唯一の有効適切な手段として最寄りの警察署に対して警察官の出勤と対処を求めるにあるのであるから、この義務は、その危険を生じさせた第一事故の原因者である吹越勝弘の道路交通法規に基づく事故報告義務とは別個に存在するものというべきである。本件においては、吹越勝弘において、第一事故後、道路交通法の前記条項に基づく事故報告を遅滞なく行なつていれば第二事故が避けられた可能性は高いか、控訴人の同局職員からも前記の如き要請をしていれば、やはり第二事故が避けられた可能性も高いのであり、双方ともその措置を懈怠したために第二事故が発生したものといわざるをえない。」に改める。

6 同一五枚目裏末行の次行以下として「控訴人は第一事故の原因者である吹越勝弘に道路交通法規に基づく事故報告の義務があり、その義務を尽していれば第二事故が避けられたこと、第二事故は吹越勝弘と被害者田中八十三の重大な過失に基づいて生じたものであることを根拠として、控訴人の電話柱保存の瑕疵と第二事故との因果関係を争うものであるが、たとえ他人の起した第一事故に原因するものであつても、控訴人の保存にかかる土地の工作物である電話柱の保存状態に危険な状況が現出してその危険防止のために適切な手段が存し、その措置をとることが可能であるのにその措置を懈怠した結果第二事故が生じたものである以上は、工作物保存の瑕疵と事故との間に因果関係があることは否定できないし、被害者にも過失が存したか否かは、損害賠償の額を定めるに当りそれを斟酌すべきか否かの問題であり、因果関係を否定すべき事由とはなりえないというべきである。」を加える。

7 同一九枚目表七行目から同裏八行目までを「前記認定のとおり、第二事故の発生については、田中八十三は前方不注視の過失があつたことは否めないものの、第一事故の原因者である吹越の過失と第一事故により危険な状態となつた電話柱についての控訴人の保存の瑕疵とが競合して事故発生の原因となつたものであるうえ、吹越の過失も、荷台を不用意に挙げたままトラックを運転走行して電話柱を折損させたこと、その後の法令に定められた事故報告を怠つたこと、更に適切な現場における誘導その他危険防止の措置を欠いたこと、の三つの態様において過失の程度は重く、また、控訴人の電話柱の保存に関する瑕疵の内容も、運転者にとつて通常予測し難い、県道上への電話柱の傾斜による道路の壅塞という異常な事態に対し、適切な事故防止対策を欠いたものであつて、その瑕疵は決して小さいとはいえない。ただ損害発生の寄与度において吹越及びその使用者である野月建材のほうが大である(したがつて共同不法行為者としての不真正連帯の損害賠償債務につきその負担部分に差等を生ずる。)が、加害者側全体の過失ないし瑕疵と被害者側の過失の双方を考慮する場合、過失割合を加害者各自と被害者の間でそれぞれ別異に定めるべきではなく、本件にあつては損害賠償の額は被害者側につき二割を減ずるのを相当と認める。してみると、損害賠償の額は、一九九〇万七四七一円の八割に当る一五九二万五九七六円となる。」に改める。

8 同二〇枚目表二行目の(一)を削除し、「同会社」の次に「、控訴人」を加え、同四行目及び五行目を削除する。

9 以上のとおり、被控訴人らは各自控訴人に対し、一五九二万五九七六円の損害賠償債権を有することになる。しかるところ、野月建材から総額九〇五万〇八九一円の支払があり、これを被控訴人らか各自二分の一の四五二万五四四六円宛取得したことは被控訴人らの自陳するところであるが、右のうち被控訴人らにそれぞれ支払われた四七万四五五五円は原審相被告吹越、同野月建材と被控訴人との間において確定した原判決により、本件事故による損害賠償として控訴人と連帯で支払義務を認められた各九四万九一〇九円の二分の一であることが明らかであるから、その残額は被控訴人ら各自につき四七万四五五四円となる。

してみると、控訴人に対し、各自四七万四五五四円とこれに対する不法行為日の昭和五五年四月五日から完済までの民事法定利率の年五分の割合による遅延損害金の支払を求める被控訴人らの請求は理由があり認容すべきである。

二以上の次第で、右と同旨(ただし、前記認定の弁済のなされない時点での権利関係について)の原判決は正当であり右弁済により減縮された請求部分に関する本件控訴は理由がないので民事訴訟法三八四条一項によりこれを棄却し(ただし、当審における請求の減縮により原判決の主文第一項中、控訴人に関する部分をこの判決の主文括弧書のとおり変更された。)、控訴費用の負担につき同法九五条、八九条を適用して主文のとおり判決する。

(田中恒朗 伊藤豊治 富塚圭介)

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